cologakin’s diary

てきと〜につらつら

1次試験

チャイムが鳴り、1次試験が始まった。

 

問題用紙が3枚配られ、3つの英語エッセイの和訳に取り掛かる。

正直、1試験につき1エッセイの和訳だと思っていたので配られた問題量には面食らった。でもまあ焦ってもしょうがないので、1時間半の試験時間だからとりあえず1つにつき約30分をあてがうことにした。

 

最初のエッセイはマルクス史観について、

 

次に大日本帝国憲法のスタイルについて、

 

そして最後は日本における東アジア地域内戦をめぐる言説について、

 

詳細を記すと、何かと面倒ごとが増えそうなので詳しい内容は割愛する。

 

なかなか訳しにくい部分が多く、とにかく目の前の部分に必死に取り組むしかなかったので全体を俯瞰する余裕はなかった。特に二つ目のエッセイはかなり手こずった。

 

けれどやはり限られた時間の中でできる限り回答用紙を埋めるために、一エッセイ和訳につき約30分を守り、最後は見直しの時間まで持つことができた。

とりあえずやり切ることができた。

 

チャイムが鳴り、30分間の休憩時間になった。

 

多くが次の専門科目の試験に備えるなか、私も手洗いに行った後『論点 西洋史学』を見返していた。

 

すると、前の席の留学生らしき女の子が声をかけてきた。

髪を引っ詰めて上結びにし、細縁のメガネをかけている。身長は低く少しふくよかな感じであった、年のころは私と同じくらいのはずなのに、化粧をしてないせいかどこか幼く見えた。

シャープペンシルの芯を欲しいという。私が数本あげると、1本でいいと言われた。

私はやはり二、三本は持っていた方が良いと思い、もう一度芯を差し出した。けれどやはり1本で良いと言う。

私は諦めた。(諦めた?)

 

数分経った後、彼女が私の方に振り返る。

 

「ありがとうございました、あなたは絶対受かる」。

 

面食らってしまった。

 

試験会場で、見ず知らずの人間の合格を祈るなんて。

 

彼女にとって、その言葉に深い意味はなかったのかもしれない。

 

けれど、嘘でもそんなことが言えるなんて、

 

いつだって自分が受かることしか頭になかった私にとっては、やはり驚かざるをえない言葉であった。

 

翌日の17時頃、私は龍馬の墓に向かう長階段の踊り場で1次試験の結果を知った。

 

前の席に座っていた彼女の番号はなかった。

 

どこか、寂しさを感じた。